話を聞いてもらうには問題提起が大切です

2019年6月13日

危機感も大事

金融庁がある試算を示しました。95歳まで生きるには、夫婦で2000万円の金融資産の取り崩しが必要になるという試算です。公的年金では資金不足になるということです。

この報告書には、長期・分散型の資産運用の重要性を強調し、各年代ごとへの今後の資産形成についてのポイントもまとめられています・

これを聞いて、あなたはどう感じたでしょうか。私が感じたのは「長生きしたくない」と感じる人が増えるのではないかということです。

テレビでの街頭でのインタビューでは「2000万円の貯金なんてできるわけない」「いまさら、どうしろっていうの」といった声も上がっていました。また、発表の表現が国民に自助努力を促した形となり、不安や批判が広がったようです。

数日後には。この報告書の「表現が不適切」であったとして、 金融相が釈明しています。

批判されてしまったこの報告書ですが、私はこうした指摘は大切なことだと感じています。内容など、全てを評価しているということではありません。

しかし、こうして明確な数字が出ることでそれが問題提起となり、それぞれが「自分事」として考えるきっかけになるからです。

自分には関係ないという感覚

人には、自分だけは大丈夫という自己別在の心理が働きます。多くの人が将来起こりうる問題に「自分には関係ない」「自分は大丈夫」と考えてしまうということです。

例えば、厚生労働省の発表によれば、40歳から90歳までの死因のトップは悪性新生物、つまり、癌です。しかし、自分が癌になると毎日思い、毎日癌にならないように100%の努力をしている人はいません。

癌という病気になるかもしれないと意識するのは、身近な人が癌で亡くなった時です。こうしたデータを伝えたとしても、根拠もなく「自分はそうならない」と考え、日常で癌のことをほとんど気にしていないのが現実です。

それはそれで必要なことです。いつも大丈夫だろうかと不安な気持ちでいたら、生きていく気にもなれません。また、明日も生きていられると思わなければ怖くて眠ることもできません。

根拠もなく「自分は大丈夫」と思うことは大切なことです。しかし、全く危機感がないのは考えものです。

例えば、飲酒運転です。酒酔い運転の罰則は「5年以下の懲役、または100万円以下の罰金」となっています。これだけ厳しい罰則がありながらも、飲酒運転による事故はなくなりません。

確かに、事故統計を考えれば、飲酒運転をしたとしても100%事故を起こすわけではありません。しかし、事故を起こす確率が高くなるという意識は必要です。

飲酒運転をする人には、「自分は大丈夫」という意識があります。自分は大丈夫、自分は捕まらない、自分には危険は及ばないという、「非現実的な楽観主義」、「自己別在の心理」です。こうして人は自分事にせずに行動したり、反対に行動しなくなることがあります。

行動してもらうには問題提起が大事

いつも危機感ばかりを感じていては生きていくことができません。しかし、危機感を持つことは大切です。そのために必要なのが問題提起です。

何が問題なのか、何が大切なのかということに気づいてもらう事で、自分事としてとらえてもらう事が出来るからです。

「自分もそうなるかもしれない」「他人ごとではない」と考えることで、起こりうる危機に関しての準備をしたり、今、抱えている問題の解決しようとする気持ちになります。

人に何か行動をして欲しい時には、相手が自分事と感じるような問題提起をすることで、相手の行動を促すことができます。

しかし、行動につながる問題提起は人によって違います。先ほどの死因のデータの様に、それを見ても相手が行動するきっかけにはなりにくい場合もあります。

その人にとって、何が行動のきっかけになるのかを考えてみてください。